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 (175) 千の手を差し伸べたまう
岡崎市・切山の大杉

「切山(きりやま)の大杉」と呼ばれる杉巨樹が愛知県額田郡額田町(現岡崎市)にあると知りました。公表されている幹周や樹高などから見て、立派な杉巨樹であろうことは期待していましたが、訪ねてみると巨樹としての素晴らしさもさることながら、自らの樹木を観る目のレベルの低さを自覚させられる忘れがたい巨樹との出会いでした。

 

 (175-1) 圧倒的な迫力で立つ大杉

 目的の大杉のすぐ近くまで車で行き、車を降りて見上げると目の前に圧倒的迫力で切山の大杉は立っていました。

 幹周:8.5m、 
 樹高:38m、
 推定樹齢:1000年、
 愛知県指定天然記念物

 この杉巨樹は林縁に立っているため、他の樹木にさえぎられることなく、全体像を観ることができました。

  

  (175-2) 大きく枝を垂らす大杉
すらりとまっすぐに延びる美しい樹形を示していましたが、何か普通のスギと異なる雰囲気を漂わせていました。近付いて良く見ると、大きく垂れ下がった無数の枝が普通のスギと異なる雰囲気を醸し出している事に気付きました。
 
この様な姿の杉の木はアシウスギ(芦生杉)と呼ばれ、日本海側の地に多いことからウラスギ(裏杉)とも呼ばれるスギの特徴です。、

  

 (175-3) 地面に着く枝垂れた大枝

 アシウスギでは垂れ下がった枝が地面に着き、そこから根が出て新たな杉の木として分離独立することがしばしば見られるそうです。

 この切山の大杉でも、垂れ下がった枝の一部は地面に着き、そこから根が出て新たな杉が育ったのでしょう。大杉のすぐそばには左写真の様な大杉二世と思われる杉の木がかなりの大木に育っていました。

  

 (175-4) 千の手を差し伸べたまう、切山の大杉

 改めて見上げると左写真の様に無数の枝を伸ばし枝垂れさせているこの杉の姿は、通常の杉の姿と大きく異なり、奇怪と呼ぶにふさわしい感動的な樹木です。

 杉の根元には前記写真右端に見える様な歌碑があり、それには

「千の手をさしのべたまう菩薩とも 切山大杉の幹仰ぎみる(近田三郎)」と記されていました。

 この奇怪な杉の木を観て千手観音に思いを致す、歌人の樹木見る目の奥深さにも感動させられました。

  

  (175-5) 謎多い切山の大杉
 それにしても、本来、日本海側にあるアシウスギがどうして太平洋側の愛知県の山中に立ち、このような巨樹にまで育ったのでしょうか。興味が尽きない切山の大杉です。
 
この切山の大杉に関して「昔々、熊野権現の化身と思われる白髪の老翁がこの地に現れ、持参した杉の木の杖を逆さまに挿して立ち去った。それが根付いてこの大杉になった」との伝説が残されています。

 

   樹木写真の属性
 樹  種 スギ(杉)[ヒノキ科スギ属]
(「樹木の見所」のページにリンクしています)
 樹木の所在地 愛知県岡崎市額田町切山字大ゾレ1
 撮影年月  2023年5月
 投稿者  中村 裕樹   
 投稿者住所  愛知県名古屋市瑞穂区
 その他